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『実さんのお父さんとお母さんについて聞きたいのよ。』
実は目を閉じゆっくり頷いた。
『半年前のスキー旅行で…夜中にあなたがうなされているのを聞いたわ。“オトン、オカン”って言ってた。』
それを聞いた瞬間、実は瞑ったはずの目を見開き、さつきの肩を揺さぶった。
そして興奮気味に口を開いた。
『俺は他に何か言ってたか!?それ以外に聞いたことは!?』
『いえ、私はそれしか…』
さつきはおびえた顔で、実から視線を逸らし、質問に答えた。
『…すまん。』
実は久しぶりに大声を出したせいか、額に汗をかいていた。
さつきは実の額の汗に、取り乱しように、不安を隠せなかった。
(一体何があったの。)
心で思っているだけのはずが、顔に出てしまっていたようである。
実はさつきのあからさまな表情の変化を見ると、少年のような笑顔を浮かべ、さつきの頭をなでた。
その行動にさつきは久しぶりに胸が高鳴り、少女のようにはにかんだ。
愛されてると感じた。
『これから俺が言うことは君を驚かすかもしれない。それでも、聞いてもらいたい。』
さつきは、今朝起きた時から覚悟していた。
何があってもかまわない、ただ、この人が私を愛してくれているならそれで良い。
さつきは頬を赤く染めた顔を縦に振った。
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