-第7章-

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二人は、いつもの公園にいた…。 そこは、滅多に人の来ない薄暗い、汚れた場所。 2人にとって話すのに絶好な場所。 あの日から、琴音と真広は必死で言葉遣いを直し、行動にも気をつけた。 そして、念のため、2人きりでいる時でも、互いの名前を逆で呼び合おうと決めた。 2人は話し合う中で、親に正直に話すか迷っていた。 しかし、結局諦めた。 一番の証明人である桜木が姿を消したからである。 それからというもの、どうしたら元に戻れるか、毎日そればかり話し合っている。 『それにしても桜木はどこ行ったんだろうなぁ。あいつ真広に何飲ませたんだ?その薬さえあればなんとかなりそうなのになぁ…』 『…ホントだよね。意味が分からないわ。薬を飲まされる直前に私に言った“望み道りにしてやるよ”って言葉、何なんだろう。』 真広は考え込むように腕を組む。 腕を組みながら、また泣きそうになる。 『泣くな。真広には俺がついてる。だから、泣くな。…必ず見つけよう。元に戻る方法を…必ず。』 琴音は立ち上がると、そろそろ帰るぞ、と言って真広の手を引っ張った。 真広は小さな声で“おぅ!”と言い琴音についていった。 2人は、公園から家までの道のりを、いつもゆっくりと歩いた。 半年間、慣れない生活に苦労してきた。 未だに一つも解決策が見あたらず不安だらけだった。 そんな苦しみも、辛さも、2人いるからなんとか助け合ってここまでこれたのだ。 『…俺たち、昔、河原で石を川に向かって投げたりしたよなぁ。』 琴音がしみじみと言った一言に真広は驚いた。 『何、言ってるの?この近くに河原なんてないよ?それにそんなの身に覚えないわっ?』 『…え?あ、そうだっけ。俺、何言ってんだろうな。わりぃわりぃ。』 琴音は困った笑顔を浮かべ、頭をかきながら言った。 その行動に、真広はどこか不思議な感覚を覚えた。 (なんか、いつもと違う。) しかしまだ、気づいてなかった。 琴音の中に起こってる事に、気づいていなかった。
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