221人が本棚に入れています
本棚に追加
二人は、いつもの公園にいた…。
そこは、滅多に人の来ない薄暗い、汚れた場所。
2人にとって話すのに絶好な場所。
あの日から、琴音と真広は必死で言葉遣いを直し、行動にも気をつけた。
そして、念のため、2人きりでいる時でも、互いの名前を逆で呼び合おうと決めた。
2人は話し合う中で、親に正直に話すか迷っていた。
しかし、結局諦めた。
一番の証明人である桜木が姿を消したからである。
それからというもの、どうしたら元に戻れるか、毎日そればかり話し合っている。
『それにしても桜木はどこ行ったんだろうなぁ。あいつ真広に何飲ませたんだ?その薬さえあればなんとかなりそうなのになぁ…』
『…ホントだよね。意味が分からないわ。薬を飲まされる直前に私に言った“望み道りにしてやるよ”って言葉、何なんだろう。』
真広は考え込むように腕を組む。
腕を組みながら、また泣きそうになる。
『泣くな。真広には俺がついてる。だから、泣くな。…必ず見つけよう。元に戻る方法を…必ず。』
琴音は立ち上がると、そろそろ帰るぞ、と言って真広の手を引っ張った。
真広は小さな声で“おぅ!”と言い琴音についていった。
2人は、公園から家までの道のりを、いつもゆっくりと歩いた。
半年間、慣れない生活に苦労してきた。
未だに一つも解決策が見あたらず不安だらけだった。
そんな苦しみも、辛さも、2人いるからなんとか助け合ってここまでこれたのだ。
『…俺たち、昔、河原で石を川に向かって投げたりしたよなぁ。』
琴音がしみじみと言った一言に真広は驚いた。
『何、言ってるの?この近くに河原なんてないよ?それにそんなの身に覚えないわっ?』
『…え?あ、そうだっけ。俺、何言ってんだろうな。わりぃわりぃ。』
琴音は困った笑顔を浮かべ、頭をかきながら言った。
その行動に、真広はどこか不思議な感覚を覚えた。
(なんか、いつもと違う。)
しかしまだ、気づいてなかった。
琴音の中に起こってる事に、気づいていなかった。
最初のコメントを投稿しよう!