-第7章-

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真広は学校をさぼった。 (…どうして?なんで?なんで私なの?なんでこうなるの…ひどい。どうして神様は私を1人にするの?私が何したのよ。) 真広の涙は既に枯れ果てていた。 何も考えず、ただ遠くへ行きたくて、電車に乗る事にした。 麻布十番駅には都営大江戸線と、南北線の二つがある。 真広は、なんとなく都営大江戸線の切符を買った。 改札をくぐってホームに着くと、ちょうど電車が到着した。 上りだか、下りだか分からないまま電車に乗り込みシートに座ると、睡魔におそわれた。 『まもなく終点、光が丘ぁー光が丘ぁー。』 プシューッ 電車のドアが開く音に、真広はハッと目が覚めた。 気が付くと、電車に乗ってから40分近く経過していた。 真広は見たこともない駅に着くとほんの少し、ワクワクした。 右に行くか左に行くか。 真広はボールペンを取り出し、地面にまっすぐたてて離した。 コトンッ (右だ!) この道の選び方は、小学生の頃、母親のひろねに教わった決め方だった。 真広は角がくるとそれを繰り返し、歩いた。 10分程歩くと、目の前に大きな公園が見えてきた。 看板には《光が丘公園》と大きく記してある。 久しぶりに見る自然の豊かさに惹かれ、公園に入ることにした。 犬を連れて歩く女性、子供同士がはしゃぐのを笑顔で見守りながら友達との会話を楽しむ主婦、ベンチで仲良く話す老人夫婦が目に付く。 幸せそうな人々に、ほんの少し元気をもらった気がした。 真広は、学生服のまま芝生に寝っ転がってみた。 女の子の時には絶対できないことだった。 『きれいな空だなぁ。』 その日は、雲一つない晴天。 真広はつい独り言を呟いていた。 その芝や青い空、木々達はまるで真広を応援しているように思えた。
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