-第7章-

5/6
前へ
/211ページ
次へ
しばらくボーッと空を眺めていた。 その広い空を眺めながら、真広は思った。 (…このままじゃいけないなぁ。琴音は自分が真広であることを忘れちゃってるんだ。今考えてみたら、琴音は私たちが入れ替わってから、一度だって弱音を吐かなかった。私が泣く度に、慰めてくれたもんなぁ。) 2年間を思い返す真広の記憶の中にあるのは、『大丈夫だよ』と笑顔で言う琴音ばかりだった。 (今まで、何度も何度も助けてくれた。だから…だから、今度は私が助ける番だ!私が琴音の記憶を取り戻す。必ず。) そう決心をして上半身だけ起きあがった。 すると、後ろの草むらから音がした。 ガサガサッ その音に驚き、真広は慌ててその場から走り出した。 しかし、50メートル程走ると、真広は思いとどまった。 (こんな時、本当の真広くんなら…) 意を決して振り返り、来た道を戻った。 (私も、強くならなくちゃ。) 真広は勇気を振り絞り、足を踏み入れた。 そして、一歩一歩慎重に草むらの中へと歩き出した。 草は150㎝程の高さで、真広の胸から下を全て隠してしまう程であった。 ズボッ 『ギャァッ』 真広は、少しくぼみとなっている穴に足を踏み外し、ついには草むらの陰に完全に隠れてしまった。 穴からはまった足を抜こうとするがなかなかはずれない。 『嘘でしょっ…はずれない!』 はずそうと力を込めれば込めるほど深くはまってしまう。 『…もぅ、なんなのよ。』 真広がどうしたら良いか分からず、後ろに倒れ込むと、頭に何かがあたった。 『いたいっ』
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!

221人が本棚に入れています
本棚に追加