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しばらくボーッと空を眺めていた。
その広い空を眺めながら、真広は思った。
(…このままじゃいけないなぁ。琴音は自分が真広であることを忘れちゃってるんだ。今考えてみたら、琴音は私たちが入れ替わってから、一度だって弱音を吐かなかった。私が泣く度に、慰めてくれたもんなぁ。)
2年間を思い返す真広の記憶の中にあるのは、『大丈夫だよ』と笑顔で言う琴音ばかりだった。
(今まで、何度も何度も助けてくれた。だから…だから、今度は私が助ける番だ!私が琴音の記憶を取り戻す。必ず。)
そう決心をして上半身だけ起きあがった。
すると、後ろの草むらから音がした。
ガサガサッ
その音に驚き、真広は慌ててその場から走り出した。
しかし、50メートル程走ると、真広は思いとどまった。
(こんな時、本当の真広くんなら…)
意を決して振り返り、来た道を戻った。
(私も、強くならなくちゃ。)
真広は勇気を振り絞り、足を踏み入れた。
そして、一歩一歩慎重に草むらの中へと歩き出した。
草は150㎝程の高さで、真広の胸から下を全て隠してしまう程であった。
ズボッ
『ギャァッ』
真広は、少しくぼみとなっている穴に足を踏み外し、ついには草むらの陰に完全に隠れてしまった。
穴からはまった足を抜こうとするがなかなかはずれない。
『嘘でしょっ…はずれない!』
はずそうと力を込めれば込めるほど深くはまってしまう。
『…もぅ、なんなのよ。』
真広がどうしたら良いか分からず、後ろに倒れ込むと、頭に何かがあたった。
『いたいっ』
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