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「平成18年1月5日(木)今日スキーから帰宅した。オヤジが天に昇ってからちょうど五年目だ。オヤジが残した言葉。俺は忘れていないからな、オヤジ。でも駄目だったよ。さつきさんに聞いたが全く分からなかった。ところで、ひろねが最近どうも変だ。何かあったのだろうか。心配だ。」
パタンッ
分厚く茶色い表紙の本を閉じると、医療用の書棚に閉まった。
誠は、父親が亡くなってから毎日書かさず日記を付けていた。
診療を終え、日記を書き終えると白衣を脱ぎ家に帰る。
それが日課であった。
日記は、誰に見られてもならない、極秘文書のような物だった。
『ただいま。』
重圧扉を開け、帰宅すると中から家政婦の加藤のぶえが出迎えてくれた。
『お帰りなさいませ、ご主人様。』
のぶえの迎えに誠は優しい口調で答えた。
『いつもすまないね、のぶえさん。ところで…』
パタパタッ
『あなた、お帰りなさい。』
ひろねは嬉しそうな笑顔を浮かべ、白地にピンクの花柄模様入りのスリッパで駆けてきた。
誠はのぶえにひろねの家での様子を聞こうとしたが、ひろねの言葉にかき消された。
『あぁ、ただいま。ひろねは元気か?』
その言葉を聞いたひろねは一瞬まじめな顔になったかと思うとプッと吹き出した。
『あなた、私は元気よ(笑)おかしな人ね(笑)』
誠は自分でも何故そんな事を言ってるのか分からなかった。
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