-第8章-

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ご主人様へ いきなりこのような形で失礼いたします。 ご主人様と2人でお話する機会が取れなかったので、お手紙を書かせていただきました。 奥様からは口止めされていたのですが、半年程前から奥様の様子が変なのです。 ご主人様は覚えていらっしゃるでしょうか。 去年の8月5日、五条実様の誕生日会、ひろね奥様は茶道教室のお友達との集まりがあって、出席ならさなかった事を。 数日後、私は奥様の茶道教室仲間の方にお会いしたのです。 その方は、私に「ひろねさんは元気になさってるかしら。しばらくお会いしてないわ。」と言ったのです。 それでも当初は奥様を疑ったりはしませんでした。 しかし、その時から、毎月5日になると、奥様は必ずお出掛けになるのです。 行き先を告げずに…。 そして必ず、ご主人様がお帰りなる前には自宅に戻られています。 私の疑問が確信へ変わったのは、確か去年の11月5日でした。 奥様は、午後1時に自宅を出ていかれました。 しかし、その日は何かトラブルがあったようで、ご主人様より早く帰宅出来なかったのです。 ご主人様が帰宅する前に奥様から電話で「主人にはバレエのお稽古の時間が伸びたと伝えてくださるかしら。」と言われたのです。 バレエのお稽古はつい一昨日前にあったばかりで、私は何か隠していると悟りました。 それでも奥様は普通の顔で帰宅なさったのです。 ご主人様に申し上げようと思っていたのですが、次の日、「どうか主人には言わないで欲しい。私はあの人を愛しているの。だから、言わないで欲しい。」と泣き付かれました。 私は、ご主人様の事も、奥様の事も、心の底から慕っております。 ですから、どうしたら良いのか分からなくなってしまって…。 先日、ご主人様に奥様の自宅での様子を訪ねられた時、私はご主人様に伝えようと決心したのです。 このような形で、本当に申し訳ありません。 私は、お仕事のない日曜日でしたら時間を作ることが出来ます。 何かありましたら、なんなりとお申し付け下さい。 加藤のぶえ
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