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札幌市内から、さほど離れていない場所に、桜井の家があった
畑が広がるのどかな風景
家のまわりには、古い廃車が、何台か無造作に廃棄されている
広い土地に両親や兄弟が住む住宅と、祖父母が暮らす住宅、そして桜井が1人で暮らす物置小屋を改築した住宅があった
その桜井の住宅はというと、一階部分はシャッター付きの車庫になっており、仲間が車を持ち込んで、修理や改造などが出来るようになっていた
桜井の住宅のまわりにも、単車やスクーター、改造車など、仲間が持ち込んだものやパクってきたものなどが廃棄され、風にさらされていた
そんな場所で1人優雅に暮らす桜井も、中学を卒業してから仕事にもつかず、親のスネをかじる実に気持ちのよい坊ちゃんだ
菜摘の体だけに未練がある新庄は、自分の家に彼女を連れ込んで、また鬼のレイカに見つかり、叩かれたらたまったもんじゃないと、菜摘を桜井の離れで、かくまってもらおうと考えていた
それにはまず、家主の桜井の了承を得ないとならない
そこで新庄は桃太郎になり、キビダンゴならぬ菜摘を、犬の桜井に分け与えようと思った
ところが童話の桃太郎と同じで、キビダンゴを犬にわけようとしたら、キジ(吉川)まで飛んできたといった感じだ
まだ少なからず、本当に元彼女だったのかと、新庄に疑念を抱く菜摘を、難なく言いくるめた新庄は、桜井の家へと車を飛ばした
時刻は深夜の午前0時を回っていた
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