~菜摘~

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あくる日、親友である結花の家で夕方まで寝て、まだ居なよと引き止める結花に別れを告げて町に出た菜摘… 夜になったらババァは 仕事で居なくなるし… 居なくなったら帰ろう… そう思い、母親の出勤時間までスーパーで、雑誌の立ち読みをして家に帰った。 だが… カーテンの閉まった窓を見ると、居間の電気は点けられ、母親はまだ居るようだった 菜摘は一瞬、家に入るのをためらったが、冬の寒さのせいもあり、玄関のドアを開けた ドアを開けると、菜摘の大好きなカレーの匂いが漂ってきた 静かに靴を脱ぎ、居間に入っていくと、母親がめずらしく台所に立っている どうやら母親は、お店を休んだようだった…… 菜摘の帰宅に気付いた母親が、彼女に声をかける 母親 「菜摘…… 昨日はごめんなさい ……………… お母さん…… 菜摘に悪いことしたね……」 母親は菜摘を見ることなく、台所に立ったまま、声を震わせながら菜摘に謝ってきた…… そんな母親の姿を見て、力が抜けた菜摘は、食卓テーブルに近寄り、そこに置かれた椅子に座り込んだ 菜摘 「オカァ、かなり酔ってたの?」 母親 「うん……… ごめんなさい………」 菜摘 「もう…… いいよ………… あたしも悪いんだし……」 母親は振り向き、ぎこちない笑顔で答えた 母親 「菜摘、お腹すいてる?」 菜摘 「うんっ!なんも食べてないから」 母と娘、2人でカレーを食べる…… 何ヶ月ぶりかの親子そろっての晩ご飯 母親 「菜摘……… 携帯欲しがってたよね?」 菜摘 「あ?うん…… でも いらないよ お金かかるぢゃん……」 たしかに携帯電話は欲しいが、家庭事情をよく理解していた菜摘は、母親の優しさを断る 母親 「明日さぁ…… 買いに行こうよ ねっ?」 菜摘 「え!?まぢ言ってんの? つか……まぢ?」 母親 「うん 明日買いにいこうよ」 菜摘 「うっそぉー!まぢ嬉しいから! つか……… お金とか大丈夫なの?」 母親 「大丈夫だよ(笑) まかしてよっ(笑)」 それは母親の精一杯の愛情表現だった ・
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