~菜摘~

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この物語に登場する14才の少女菜摘が産まれ育ったのは、北の大地北海道の中心地より東に位置するM町である M町は、今や旭山動物園の人気などで全国的に有名になった旭川市から、東へ約30キロ程離れた年々、過疎化が進む小さな町だった。 彼女の両親は、旭川市内で店舗を借りてラーメン屋を経営しており、夫婦が住むM町から、仕事場がある旭川市を毎日往復していた。 ラーメン屋の経営は順調で、これといった大きなトラブルもなく、夫婦仲も良い2人の間に、やがて小さな命が誕生する。 2200グラム、マシュマロのような白い肌、小さな手とサクランボ色の可愛らしい唇が特徴の、女の子の赤ちゃんであった 菜を摘むがごとく、ひとつひとつ幸せを摘んでいってほしいと、父親はその小さな命に『菜摘』と名付けた。 授乳の時、何も教えなくても母親の乳房に、小さな口をもっていき、一生懸命に吸う小さな菜摘を見て、改めて命の尊さ、素晴らしさを実感する両親。 幸せだったはず…… 産まれたばかりの菜摘のまわりは、なにもかもが幸せだったはずだ…… なのに……… その幸せは……… 残念ながら、崩れ去ってゆく……….
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