~菜摘~

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どうする事も出来なくなった時、自分が置かれている立場に気付いた父親。 その時には、仕入れも出来なくなったラーメン店を閉めざるをえなくなっていた。 仕事場を失い、莫大な借金だけが残ってしまった父親…… そんな父親に、何も知らない小さな菜摘は、無邪気な笑顔を見せている。 夫婦は顔を合わせるたびに、言い争いをするようになってしまった。 返すあてもないこちらの気持ちも考えず、きびしい催促の手がM町の自宅まで、伸びてきた。 こうなっては、もうどうしようもない…… せめて、愛する妻と、可愛く無邪気な娘だけは、守りたいと考えたのか、最後の手段をこの父親は行使する。 夫婦の離婚と、我が身を隠すことだ。 まだ菜摘が2才の時、家族は崩壊した 離婚して家賃が払えなくなった母親は、一軒家の借家を追い出され、M町内の町営住宅に引っ越した。 ブロック作りの平屋で古い粗末な住宅だった。 菜摘が小学校に入学するまでは、町から出る育児手当や、生活保護費で細々と生活していた母親だが、町役場に顔を出すたびに、働けとイヤミを言われるようになる それに耐えきれなくなった母親は、生活保護を打ち切り、菜摘が学校に行ってる間だけ町のスーパーで働きだした。 だが当然、スーパーのバイト代と、スズメの涙ほどの育児手当だけでは、生活していけなくなり、手っ取り早く稼げる夜の世界で働くようになる。 菜摘がまだ8才の時だ。 ・
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