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菜摘も、辛く寂しかったはず…
宿題を手伝ってくれることもなく、通信簿すらまともに見てくれず、奥の部屋で出勤準備にいそしむ母親を見ながら、食卓テーブルにちょこんと座って、夕ご飯を食べる…
なんとも寂しく、味気ない夜の風景…
めずらしく夜中に帰ってきたと思ったら、知らない男の笑い声が、菜摘が1人寝る部屋まで響く…
やがて男の声は消え、母親の喘(あえ)ぐ声が、菜摘の耳に届いた…
いやらしく醜い獣のような声を、聞くまいと両手で耳をふさいでいた菜摘…
毎年学校で催(もよお)される運動会すら、母親の姿は無かった
子供ながらに菜摘は、朝帰りする母親に気を使い、運動会の開催日を知らせていなかった。
午前の種目が終わり昼食時になると、観覧席で親達と楽しそうに昼食をとる友達を見ながら、隠れるようにして体育館裏や誰もいない教室に行き、朝買ったパンを、たった1人で食べていた……
学校が夏休みに入ると、まわりの友達は海や山に出掛けていく。
1人ポツンと公園に残される菜摘…
それが恥ずかしくて…
とても寂しくて…
朝のラジオ体操が終わると、友達に嘘をついてしまう
菜摘
「今日、旭川にお母さんと買い物にいくの!」
とか
「今日は海に行くんだよー」
いたいけでせつない子供の嘘だった……
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