~菜摘~

6/11
5075人が本棚に入れています
本棚に追加
/435ページ
菜摘も、辛く寂しかったはず… 宿題を手伝ってくれることもなく、通信簿すらまともに見てくれず、奥の部屋で出勤準備にいそしむ母親を見ながら、食卓テーブルにちょこんと座って、夕ご飯を食べる… なんとも寂しく、味気ない夜の風景… めずらしく夜中に帰ってきたと思ったら、知らない男の笑い声が、菜摘が1人寝る部屋まで響く… やがて男の声は消え、母親の喘(あえ)ぐ声が、菜摘の耳に届いた… いやらしく醜い獣のような声を、聞くまいと両手で耳をふさいでいた菜摘… 毎年学校で催(もよお)される運動会すら、母親の姿は無かった 子供ながらに菜摘は、朝帰りする母親に気を使い、運動会の開催日を知らせていなかった。 午前の種目が終わり昼食時になると、観覧席で親達と楽しそうに昼食をとる友達を見ながら、隠れるようにして体育館裏や誰もいない教室に行き、朝買ったパンを、たった1人で食べていた…… 学校が夏休みに入ると、まわりの友達は海や山に出掛けていく。 1人ポツンと公園に残される菜摘… それが恥ずかしくて… とても寂しくて… 朝のラジオ体操が終わると、友達に嘘をついてしまう 菜摘 「今日、旭川にお母さんと買い物にいくの!」 とか 「今日は海に行くんだよー」 いたいけでせつない子供の嘘だった…… ・
/435ページ

最初のコメントを投稿しよう!