出発と共に

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出発と共に

「槞兎様、よいのですか…。護衛の者達もつけずに…」 「そんな者達は… 必要ないですょ。 私の城の者達は…私を護りたいのではないのですから。」 「ぇ…?」 二人は城を出てからゆっくりと足を進めていた。 「それはどういうことですか? 王を護るのは兵士の役割では…」 「莉流姫、私の力をご存知なら 理由くらいおわかりでしょぅ。」 そぅ 槞兎の不思議な力… これがあるからこその国。 槞兎がいなくなれば国が崩去る同様。 国、民は力を利用し続ける。 莉流は悲しそうに俯いた。 「槞兎様…私は決して槞兎様をそのように見ているのではありません。 我が国はもぅ…」 「わかっている、姫…」 槞兎は足を止めて莉流を真剣にみた。 「貴女はお噂からしてそのような人ではないことはしっている。 民を思い、わざわざ私の所まで来たのだからな…」 槞兎はにっこりと笑いかけた。 だがその笑顔は どことなく悲しそうにに見えた…。 「莉流姫、敬語はやめてもよいですか?」 槞兎がたずねる。 「私は別にかまいませんょ。」 莉流は笑った。 「わかった。 俺は昔から城以外では敬語を使わないんだ。 すまない。」 「いいえ。 槞兎様もお噂どおりですねっ。」 お互い笑った。 槞兎はその時ふと思ったのだ…  ―この前笑ったのなんて…  いつだったかな…
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