恋愛の話。

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「なんで……? とても…素敵な歌声なのに……」 そんな哀しそうな顔をするの? 「レッスンに合格しなきゃ食事は貰えなかったの 学校にだって、町にだって、空気が悪いからって行かせて貰えなかったの」 賞をとらなきゃ叩かれて、 毎日毎日怯えながら暮らしていたって。 「でも『歌』しか歌う事を許されなかった私は、他に何も教わらなかったから」 だから歌しかないの。 世界に他に何が溢れているのか分からないの。 って泣きながら。 「皆、私が歌うと泣くの。 でもね、彼は違った。つまらないって言ってくれたの」 『そんなつまらない歌、辞めてしまいなよ』 って。 泣かなかったから、 だから、 私が代わりに泣いたの。 そんな言葉初めてだもん。 こんな涙初めてだもん。 こんな温もり誰も教えてくれなかったから。  
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