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薄暗くなった学校の、図書館に彼はいた。
4人掛けの机にうつ伏せに眠っていた。
「彼女、留学するってよ」
耳元で囁くと微かに唇を動かした。
が、急に起き上がった。
「おはよう」
私は完璧に微笑みかけた。
彼はすぐに冷静な顔に戻った。
「――説得に成功してくれたんだな」
「ええ。約束通り付き合ってくれるんでしよ?」
私が首をかしげて甘えた声で言った。
彼は静かに――あぁっと頷いた。
バサッ
「――!?」
私は彼が枕変わりに敷いていた本を投げつけた。
その本はあの少女が留学する国だった。
「―――馬鹿にしてるの?」
私は呆然と立ちすくむ彼を睨んだ。
「自分で説得できないくせに留学させるんじゃないわよ!!!」
好き、なくせに。
大切なくせに。
どうして手放そうとするんだろう。
「君には分からないよ……」
彼女の未来を奪う恐怖を、君は分かるわけないよ、って。
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