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「彼女がそう言ったの?
歌しか知らない世界を彼女は望んだの?」
「もう良いだろ!!約束通り俺は君と付き合う!それで良いだろ!!」
ドンッ
私は彼を突き飛ばした。
なんでこんなに涙が出るのか分からない。
「この先、彼女は貴方が居なくなった世界で、
――貴方の為に歌い続けるんだよ」
無邪気に、笑いながら。
温かみのない世界に。
「確かに彼女の歌声は素晴らしかったよ。
でもあんな純粋な歌声を悲しく辛そうに歌わせ続けるの?」
―――私はここだよ
彼女の訴えは誰にも聞こえない。
彼女の歌声しか誰も気にしない。
「好き、なんじゃなかったの?」
「好き、なんて簡単な言葉じゃ言えないよ」
多分、彼女しかいない。
何も世界を知らない彼女だからこそ、
俺の世界を全て暴いていく。
彼女しか、俺は上手く心を開けられない。
あんなに悲しそうな辛そうでつまらなそうに、歌わせる彼女の世界が許せない。
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