1/2の話。

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その男の子は、マンションの屋上で、 屋上のコンクリートの床一面に、クレヨンで線を描いていた。 俺が、たまにはこんな鉄の森を描くのも悪くないかなって、絵描き気取りで辿りついた、国での事だよ。 黒いランドセルが、太陽の光に反射して、ちょっと眩しかったけれど、 床を見つめて、落書きする男の子には、光なんて見えてなかったんだ。 「何を描いているの?」 普段、自分から人に関わらないのに、 話しかけられてから初めてそこに居たんだと認識するぐらい 人に無関心な俺が、 とても気になった男の子。 幼い男の子のはずなのに、 俺と同じ痛みを知っている気がしたんだ。 光が見えないぐらいの痛みが。  
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