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男の子は顔を上げずに答える。
「見て分からないの?」
半分以下になった青のクレヨンで、男の子は床に力を込めずに線を引いていく。
「とても長い、色鮮やかな二つの線だね」
それしか分からなかったよ。
そう言うと男の子はこちらを見上げた。
「どちらも同じぐらい大切だから、ぼく決められないって先生に言ったんだ」
屋上の床の端から端までに引かれた、長い2本の線。
「そうしたら、選べない程に大切なら、あとは運で選ぶしかないよって」
だから今、『運』で決めているんだ。
手離す方を。
「君の大切なものって?」
男の子は立ち上がると、端までゆっくり歩いてゆく。
そうして、俺を見上げた。
「 お父さん と お母さん 」
一番端まで歩いていくと、端から端からまで引かれた2つの線に、
横に線を引き始めた。
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