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俺はしつこく話しかける。
「なんであみだなの?」
男の子は下を向いたまま顔を上げずに、
「だって、お母さんとお父さん喧嘩するんだ
『朝、先に挨拶してきた方が引き取りましょう』とか
『中学に入学する前には離婚しますからね』って」
毎晩、毎晩毎晩毎晩
「ぼくの存在も喧嘩の原因みたいなんだ」
だから家に居なければ、
ぼくが自分で選ぶって言えば、
喧嘩の原因は減るでしょう?
それに、家に居なければ、
喧嘩の声、聞かずにすむしね。
「君は、とても優しいんだね」
こんなにも、両親を愛してるのに、
両親はこの子を見てはないんだね。
しょうがないけれど、
生まれる場所を自分で選べないけれど、
けれど、
「ぼくが居なくても平気なら、
ぼくは生まれなきゃ良かったんだ」
そんな、自分を否定する言葉、
こんな、優しい男の子から聞きたくないよ。
化物の俺だって、
見苦しく生きながら、
自分の存在が赦される場所を探しているのに。
「だから、ぼくはここで運で選んでいる」
細やかな足掻きを見せながら。
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