1011人が本棚に入れています
本棚に追加
俺はしつこく話しかける。
「なんであみだなの?」
男の子は下を向いたまま顔を上げずに、
「だって、お母さんとお父さん喧嘩するんだ
『朝、先に挨拶してきた方が引き取りましょう』とか
『中学に入学する前には離婚しますからね』って」
毎晩、毎晩毎晩毎晩
「ぼくの存在も喧嘩の原因みたいなんだ」
だから家に居なければ、
ぼくが自分で選ぶって言えば、
喧嘩の原因は減るでしょう?
それに、家に居なければ、
喧嘩の声、聞かずにすむしね。
「君は、とても優しいんだね」
こんなにも、両親を愛してるのに、
両親はこの子を見てはないんだね。
しょうがないけれど、
生まれる場所を自分で選べないけれど、
けれど、
「ぼくが居なくても平気なら、
ぼくは生まれなきゃ良かったんだ」
そんな、自分を否定する言葉、
こんな、優しい男の子から聞きたくないよ。
化物の俺だって、
見苦しく生きながら、
自分の存在が赦される場所を探しているのに。
「だから、ぼくはここで運で選んでいる」
細やかな足掻きを見せながら。
最初のコメントを投稿しよう!