初恋 ~浅き夢見し~

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人探しをお願いしたいと、依頼者は言った。 30代前半、センスの良いスーツに身を包み、腕には一目で高級品と分かる時計。 ルックスもなかなかのものだ。 差し出された名刺の役職には、専務とある。 おそらくこの会社の2代目なのだろう。 不公平な神様に、心の中で軽く舌打ちをする。 話を聞くと、対は中学時代の同級生の女性。 名前と当時の住所しか分からないと言う。 しかも、対は家族一同で夜逃げ同然で引っ越したらしい。 夜逃げだとすると、足取りを追うことは非常に困難になるだろう。 行き先を示して夜逃げする人など、いるわけがない。 「どうしてもと仰るのであれば、受けなくもありません。 ですが、成功する可能性は低いと思います。 調査方法によっては、非常に高額になることもありますが・・・」 私が言うと、依頼者はしばらく考え込んでいたが、お願いしますと言った。 調査方法を考え、おおよそのかかる費用を後日伝えると告げ、面談は終わった。
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