初恋 ~浅き夢見し~

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依頼者はとても残念そうにうつむいた。 一体何が、彼をここまで思い詰めさせているのだろう。 失礼を承知で、探している理由を聞いてみた。 「・・・僕は、彼女を裏切ってしまいました」 しばらく押し黙っていた依頼者だったが、ゆっくりと話し始めた。 「中学2年生の時です。 僕と彼女は同じクラスで、仲の良いグループでした。 いつしか僕は彼女を好きになり、彼女も僕を好きになってくれていました」 押し殺され溜まっていた感情が、言葉となり、堰を切って溢れ出す。 二人は自然と距離を縮めていった。 まだ幼さも残る恋だったが、それでも二人は幸せだった。 だがその幸せは、ある日突然に終わりを告げる。 「彼女の父親の事業が失敗し、会社が倒産したんです。 その会社は、僕の父の会社と取引があって、倒産のせいで、こちらにも損害が生じたようです」 当時彼は、彼女が父親の会社の取引先の娘だということを知らなかった。 彼女から聞き、初めて知ったらしい。 彼は戸惑いながらも、親と自分たちは関係ないと、彼女を勇気付けた。 親には反対されるだろうが、それでも彼は、彼女を愛し続けようとした。
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