初恋 ~浅き夢見し~

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「手紙には、最後に会いたいと書かれていました。 日にちと時間、僕らの思い出の場所を待ち合わせ場所にして」 彼女はどのくらいの間、待っていたのだろう。 待ち合わせの時間を過ぎても、その場を立ち去れなかったに違いない。 何度も諦めて、そのたび思い直して。 彼女の心情を思うと、胸が痛くなる。 彼は15年という時を経て、彼女の気持ちを見つけた。 裏切られたと思っていた自分が、情けなくなった。 裏切っていたのは、彼女ではなく自分だったのだと思った。 そんなことはないのだが、待ち続けていただろう彼女を思ったら、己を責めずにはいられなかった。 「実は、ここで4社目なんです。 どこも彼女を見つけられませんでした。 お金はいくら掛かってもいい、もう一度お願い出来ませんか」 私はしばらく考え込む。 そして依頼者の目を見据え、聞いた。 「もしも見つかったとして、あなたはどうするおつもりですか? もうずいぶんと時間が経っています。 彼女は家庭を持っているかもしれない。 あなたが現れることで、彼女を新たに傷つけるかもしれないんですよ?」 そこまで話した時、ドアが開いた。
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