一章

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  「別れて…ほしいの…」   愛する人からの別れの言葉。   それはあまりに突然で…。   それは恋が終わる意味を表す言葉。   [永遠に忘れられない恋]   「急に…どうしたん?」   部活を終え、帰路の途中で楝華が言った…別れの言葉。   俺はいきなりの事で、すぐには理解出来ない。   「私と…別れてくださいっっ…」   ただ同じ台詞を口にし、俺に頭を下げる。 楝華の小さな身体は微かに震えていた。   「ハハッ…新手のギャグ…か?おもしろくないぜ…」   乾いた笑いが零れる。 冗談にしては笑えない。 悪質なイタズラとさえ思った。   「違うっ…っ本気で言ってるの…」   ずっと頭を下げたまま、小さな声で… でも、俺には、はっきりと聞き取れた。   「顔上げて…俺を見ろよ…」   俺がそう言うと、楝華は顔を上げた。 でも、すぐに俯いた。   「…」   黙り込んで、ただ地面を見つめたままの楝華。   「っ…何で俺を見ないんだよっ!?俺と別れたいんだろ!?だったらちゃんと目ェ見て理由言え!」   つい、怒鳴り声を上げてしまった。 楝華は一瞬、怯えたようにビクリとした。   そして… 地面に落ちる雫が見え、それは涙だと、すぐに分かった。   顔を上げた楝華が泣いていたから…。   「言えないよっっ…」   楝華の涙は止まる事なく頬を伝い、地面にいくつも落ちていく。   「なんで言えないんだよ!?理由位あるだろ!?俺に飽きたとか、嫌いになったとか!」   落ち着こうとしても、溢れ出る感情を止められない。 こんな事…言いたくないのに…。   「違う!侑士の事…嫌いになってない!!」   「だったらっ…別れる必要ないだろ?!」   まだ… 俺の事が好きなら、楝華は別れを言う必要はない。   他に理由があるとしか思えなくて、俺は楝華を問いただした。   しかし、楝華は本当の理由を言おうとはしなかった。   何故、頑なに拒否するのか…   何故、別れなければいけないのか…   一切、口にしなかった。
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