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よっぽど腹を空かしていたんだろう。肉まんはすぐに少年の腹に収まった。
また取り出して食べればいいのに、少年は残った肉まんが入った袋を大事そうに抱き締めて食べようとしない。
不思議に思い聞いてみると、少年は屈託のない笑顔で答えた。
「嬉しいから、大事に食べたい。」
俺はその言葉を聞いて理解した。
普通、いきなりちょうだいと言われて素直にあげる奴はいない。
恐らく俺が初めて食べ物をあげたのだろう。
―だから…本当に嬉しいから、大事にゆっくり食べたいのか―
そう思った俺は少年の事を放っておけなくなった。
普通なら中学に通っているだろう年なのに、こんな雪が降る程の寒空の中で寒そうな格好で通行人に食べ物をねだり。
俺は少年に家族はいないのか聞いてみた。
少年は首を横に振って少し悲しそうに笑い「捨てられちゃった…」と言った。
俺は少し考えて少年に聞いてみた。
「坊主、家に来るか?」
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