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私はママに電話をした。
マサトが…私が…もうヤダ…もうダメだ
頭の中が整理出来ていないのに、ママに電話をかけていた。
━もしもし━
ママの声が電話の向こうから聞こえた瞬間、私は冷静さを取り戻した。
言ったらダメ!
知られたらダメ!
心配かけちゃダメ!
幸せじゃなきゃダメ!
「もしもし?リカ?」
ママが喋ってる言葉が、ようやく耳に入って来た。
私はフゥーッと息を吐いて喋り出す。
『あ…今電話平気?』
「平気だけど…どしたの?こんな夜に。」
『ごめん…あのさ聞きたい事あって…あはは』
私は【この時間に、まだやってるスーパーある?】と咄嗟に嘘を付いた。
「隣町のジャスコは食品売場だけやってるよ(^^)でも…今から買いに行くの?もう夜1時だよ?」
心配そうに聞いてくるママに
『明日、マサト朝早くて…私その事うっかり忘れてて…お弁当の材料買うの忘れてたんだ』
そう答えた。
「そうなんだ…でも、これから買い物行って帰って来て…朝早く起きて、リカ…あんた寝る暇あるの?赤ちゃんに悪影響だよ。」
心配して優しく気遣ってくれるママの言葉を聞いて、私の目から涙がこぼれ落ちた。
私は電話の向こうのママに泣いてる事が悟られないように、小さく咳払いをして誤魔化しながら喋った。
『大丈夫だよ。昼間ちゃんと寝たから~。それよりも毎日働くマサトにご飯作らなきゃだから、行ってくるね。じゃあ!』
また、一つ嘘が増えた。
この時ママに話していたら、どんなに楽になれただろう。
でも私は言えなかったよ。
そして、私は家を飛び出してしまったマサトの帰りを寝ずに待った。
その日は帰って来なかった。
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