ACT.1『伝説のダウンヒラーの血を継ぐ者』

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  「ユキ、早く起きな!!」   亜澄と入れ代わる様に、ノックせずに、また女がドアを開けて入ってきた。   「真澄姉さん…ノックぐらいしてくれよ…。」   寝間着のズボンを脱ごうとしていた手を止めた。   彼女は、 《秋篠 真澄》 アキシノ マスミ 24歳。 職業…高校教師。 亜澄の学校で、国語を教えている。 容姿端麗、知的なお姉さんとして生徒に人気があるが、 その裏で、約2年前までは、地元の峠ではそこそこ名の通った走り屋だった。 現役の頃は、由貴の愛車であるMR2に乗っていたが由貴の免許取得を機に、 『プジョー 206 CC S16』を購入し、それに乗っている。   ちなみに、亜澄がユタカをユキと呼ぶ理由は真澄がユキと呼ぶからである。   「全く…今日も5時帰りだったでしょ?」   Tシャツを脱ぎ始めた由貴を見ながら、ドア枠に寄り掛かって真澄が言う。   「しょうがないだろ?冬矢の奴が、全然帰してくれないんだ。」   と、専門学校用のツナギをクローゼットから取り出しながら由貴が言う。   ちなみに『冬矢』とは、 《藍沢 冬矢》 アイザワ トウヤ 18歳。 由貴の悪友で、専門学校の同期生。 愛車は、『RX-7 タイプRZ』の初期型である。   「まあ、怪我だけはしないでよ。お母さんやお父さんに申し訳がたたないんだから。」   「わかってる。」   それだけ言うと、真澄は階段を降りて行った。   由貴も急いでツナギに着替えて下に降りる。  
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