8人が本棚に入れています
本棚に追加
『それがわたしの知ってるすべてよ』
「…………」
僕は無言だった。
というか、何も言葉が出なかったのだ。今の話が本当だとしたら僕は猫語以外の言葉を話せる母親の血を引いているから、自分も同じ状態になっているということになる。
『それからあなたがどうなったのかは知らないわ』
「僕は……」
『記憶が戻ったらその先のこともわかるでしょうね』
「記憶……」
『どうする?あなたが元に戻りたいならその場所を教えてあげるけど?今のあなたは幸せに暮らしてるみたいだから、無理にとは言わないわよ。わたしがおじさんと約束したのも、タイムが猫語以外の言葉を話したら。でも今のあなたはタイムじゃない。だから、あなたが決めるべき』
僕はどうしたいのだろう。最初は元の猫に戻りたかったからいろいろ調べてここに来た。
でも、いざ元に戻れるとわかったら、あまり戻りたくなくなってきた。今明日香さんや由美さん、悠太君と話せるのが普通になって、話せなくなったらどうなるんだろうと思ってしまっている。
僕はどうすればいいんだろう。
そんなとき、僕の頭の中にひとつ気になったことが浮かんだ。
最初のコメントを投稿しよう!