10人が本棚に入れています
本棚に追加
††††††††††††††
――カチコチカチコチ
《それ》は突如回り始めた。
――カチコチカチコチ
頭の中に時計が入ったように、間近で回る音がする。
同じく突如として襲ってきた頭痛。目が眩むほどの頭痛が音に合わせて、疼く。
「――っ……なんだっこれ?」
頭を押さえる。けれど頭痛は引かない。収まる気配すらしない。
――カチコチ
時計は回り続ける。
――カチコチ
――カチコチカチ
「ア゛ーッ。ア゛ーッ」
どこからともなく響く声。そう、烏だった。
「――っ。ふざけるな!」
夢の御告げなど信じるものか。目に見えることこそ絶対。触れ得ぬものに価値などない!
激情は痛みを越える。
いつ倒れたのか、よろめきながら立ち上がった。いつしか音は、目覚ましのようなベルへと変わっている。
ふらつく足の先に、誰かの影が見えた。
「ホント……奇遇なものね」
それは、とてもゆっくりとした物言いだった。
嘲るような微笑みが、酷いほど似合う少女が立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!