10人が本棚に入れています
本棚に追加
ベルが止んだとともに、あれほど酷かった頭痛も嘘のように引いていた。
そのことが混乱しそうな頭で冷静に考える余裕を持たせてくれる。
「君は――いったい誰なんだ?」
自分よりも小さな少女に、喧嘩腰に質問を投げつける。
僕の身長は165cm。決して高い方とは言えないが、この少女はどう高く見積もっても1mちょっとしかない。
少女は答える訳でもなく、ふと空を見上げた。
銀髪の上に乗った黒いカチューシャが、わずかな風を受けてふわりと揺れる。
「あれは始まりの鐘。《アリス》に朝を告げる、目覚ましのベルよ」
落ち着いた物言い。小さな子供でも、こういう言い回しをする子はいるだろう。
しかし、決定的に何かが違った。何が違うのかは分からないが、わかる。
“根本的な何か”が違う。
背筋がゾクリと震えた。
自分は畏怖しているのだ。他ならない、この小さな少女に。
紅い瞳の焦点がこちらを見据える。肉食獣に睨まれた小動物のように身を竦めた。
最初のコメントを投稿しよう!