第一章

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     ベルが止んだとともに、あれほど酷かった頭痛も嘘のように引いていた。  そのことが混乱しそうな頭で冷静に考える余裕を持たせてくれる。   「君は――いったい誰なんだ?」  自分よりも小さな少女に、喧嘩腰に質問を投げつける。  僕の身長は165cm。決して高い方とは言えないが、この少女はどう高く見積もっても1mちょっとしかない。  少女は答える訳でもなく、ふと空を見上げた。  銀髪の上に乗った黒いカチューシャが、わずかな風を受けてふわりと揺れる。   「あれは始まりの鐘。《アリス》に朝を告げる、目覚ましのベルよ」  落ち着いた物言い。小さな子供でも、こういう言い回しをする子はいるだろう。  しかし、決定的に何かが違った。何が違うのかは分からないが、わかる。  “根本的な何か”が違う。      背筋がゾクリと震えた。  自分は畏怖しているのだ。他ならない、この小さな少女に。    紅い瞳の焦点がこちらを見据える。肉食獣に睨まれた小動物のように身を竦めた。
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