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少女の紅い瞳は、ゆっくりと僕の全身を舐め回していった。
彼女から伝わってくる圧倒的な圧迫感。
再び目が眩みだす。
これれこそ、狩るものと、狩られるものの違い。背は小さくとも少女は狩人で、僕はその獲物だった。
「ねぇ。あなたのぉ……お名前はぁ?」
先ほどまでの落ち着いた口調とは違い、小馬鹿にしたような物言い。
肉食獣は、じっくりいたぶってから仕留めるのだという。
だとしたら、動揺を誘われるな。どのみち逃げ場はないのだから。
「ヒ、ヒナタ。ヒナタだよ」
「ヒナタ――ヒナタ。かーわいいお名前ぇ」
反芻し、少女の唇がさらにつり上がる。
彼女は壊れているのかもしれない。でなければ、こんな歪んだ笑みを浮かべることができるのだろうか。
「聞き返すけど、君の名前はなんだ」
少女は『あぁ~』と頷き、
「私はぁ、《葬魔燈[そうまとう]》。さっき言った、アリスの一人」
ドレスの裾を摘まみ、葬魔燈は優雅に一礼した。
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