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† †
もう朝が来ていた。薄ぼんやりとした意識を覚醒させ、ふらつくように起き上がる。
憂鬱な朝だ。脇の時計の長針はすでに6を少し過ぎたところだった。
100%間違いなしの寝坊である。けれど、急ぐ訳でもなくベッドから立ち上がった。
水の跳ねる音。ひんやりとした冷たい水が意識を確かなものへと固めていく。
鏡に映る顔は線が細く鼻筋も整っているが、片目にはくまが出来てとても窶れているようだった。
「――っ。クックッ……」
そんな自分の顔立ちを見てふと笑いが漏れる。
キュッと音をたて蛇口が閉められた。
「ああ、おはよう。ヒナタ……」
鏡に語りかける彼の姿は、とても異様でそれでいて寂しそうに見えた。
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