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「うん。うまい……」
モグモグモグ。咀嚼する小さな音が響く。広いとも狭いとも、どっちつかずの広さのキッチンの四つ椅子テーブルの一つだけが埋まっていた。
カチャカチャと食器が立てる音以外、この家の中から物音は立たない。つまり、独りだ。
とっくに時計は九時半を回っている。けれど、こんな中で摂る朝食だからこそ余計に美味しいのかもしれなかった。
「ふー……」
自作の朝食を平らげ、背もたれに寄りかかってぼんやりと天井を見てみる――木目が見えるだけだ。
次に窓の外を見てみる――苛立たしいほど明るく、また青かった。
「……はぁ」
卑屈すぎる。そんな自分にため息。学校へ行く気力もなく、外へ出る根気もない。
いつか自分は餓死するのではないか。冷蔵庫の中もそろそろ空だ。
それに、こんなに窶れていたっけ?
鏡を見てまた思う。
「――これが、僕か。ククッ……」
とりあえず買い出し行かないと。マジで死にそうだ。
椅子を引く。ガシャッと硬質な音を立て、食器は水へと沈んだ。
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