1.未来へのプロローグ。

2/16
3741人が本棚に入れています
本棚に追加
/311ページ
1999.12.31 なんとか4年間で大学を卒業できる目処がついた俺は、年末だと言うのに仙台へ帰省するでもなく、6畳一間のボロアパートで新しい年を迎えようとしていた。 大学4年目の年の12月、未だに卒業に必要な単位が不足していて、つい先日まで徹夜で試験勉強することを余儀なくされ心身ともに疲れ果てていたため、今はとにかく少しゆっくり休みたかったのだ。 振り返ってみると俺の大学生活は、とにかくバイトに明け暮れた4年間だったと言える。 親からそれなりの仕送りもあったので、さほど金に困っていたわけでもないけど、これも社会勉強の一つだと自分にいい聞かせ、学校そっちのけで日々割のいい仕事を探してはせっせと稼いで、その金で友達と酒をのんだりパチンコ屋へ足を運んだりしていた。 そのツケを払うため、とっくに十分な単位を修得していた周りの友達がやれ卒業旅行だとか、内定取った会社がどうだとか浮かれているこんな時期に、俺はひとり部屋に籠り鉛筆の芯を舐めるはめになったのだ。 実家の母には、そんなわけで今年の年末は帰れないからと正直に電話で話しておいた。 これ以上無駄な心配をかけたくないという思いがあったからだ。
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!