序章[始まりの音]

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「…………どうして聖痕を?」 その言葉の後、少しの間が空く。 そして、グレイも自分の左手のグローブを外して、テーブルの上に乗せた。 そこには、リエーリと同じ複数の黒線が引かれていて彼女とはまた違った模様を描いていた。 「これがあるだけで僕らギフターは国の為に人を殺す道具になる。生まれた時から与えられたこの力のせいで」 そう言って、恨めしそうな顔をしてグレイは自らの聖痕を見つめた。 いや、睨んだと言った方が適切かもしれない。 「中にいるコはどう思ってるの?」 「この聖痕は消さないよ。彼と約束した、手を貸す代わりにだって」 そう言って、再びグレイはグローブをはめ直す。 その直後、急に火薬の炸裂音と同時に地面が微かに揺れた。 「なっ!?」 「何!?」 二人が驚いて椅子から立ち上がった時、外から悲鳴と叫び声を聞き取る。 それである程度事態を悟ったグレイは、腰に差してあった大剣を引き抜き、突破るようにドアを開いた。 そこには、燃える建物や確かに感じる一方的な狂気。 「まさか…………」 ふと、グレイの中にイヤな予感がよぎる。 初めてこの村を見た時に村の様子を見てきたが、聖痕を持つ子供が一人二人と目に入った。 「女は殺すな、残りは構わねぇ」 上半身裸で右目に大きな傷跡の出来た典型的な山賊の頭領が叫ぶ。 その左手の甲にはハッキリと黒の刻印が刻まれている。 泣き叫ぶ声と共に、下衆じみた笑い声が村の中に響く。 しかし、その笑い声は直ぐに収まり叫び声となって消えた。 「ハァ……よかった、ただの下衆で」 血塗れた大剣を片手で担ぎ、グレイが安堵した様子で山賊の頭領に歩み寄って来た。 しかし、その様子とは裏腹に彼の眼にはハッキリとした殺意が籠っていた。
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