序章[始まりの音]

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グレイは、返す言葉が無かった。 確かに最後のガザンという男以外は、手足の骨さえ折れば、殺す必要は無かった。 それに、力のみで統率していた集団だ。 頭を失えば、自然壊滅も目に見えていただろう。 「最低」 そう言い放つと、リエーリは先程の家へ歩いていった。 彼女の雰囲気を感じ取った村人達は、誰も彼女に話し掛ける事無くただ沈黙が続いた。 「………………最低か」 元兵士であった為の常識が、恨めしくおもえた。 ギフターの力は、容易に人を壊すのだ。 まるで、積み木の城を崩すように。 「すいません、今は火葬をしませんか?」 沈黙を破った青年の声に、グレイは正気に戻る。 両手に掴んでいる物を見て、今やるべき事に頭を出来るだけ切り換えた。 「そうですね、すいません。今、行きます」 両手の死体を担ぎ上げて、グレイは薪を集めてもらっている広場へ、足を運んだ。    ※ ※ ※ ※ ※   「………………」 リエーリは、ベッドの上で仰向けになっていた。 何処か、難しいような顔して、ジッと天井を見つめている。 すると、小さなドアを叩く音が二つ。 「リエーリお姉ちゃん」 ドア越しの可愛らしい声に、ノックの主を知ると、リエーリは身体を起こした。 「ちょっと待って、今あけるね」 そう言って、ドアを開き笑顔で少女を迎える。 しかし、向こう側にいた少女の顔は、今にも泣き出しそうな。 そんな表情をしていた。
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