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「…………どうしたの?」
下をうつむいたまま、何も言わない少女に、リエーリは問い掛ける。
すると、少女は少し潤んだ瞳でリエーリを見上げる。
「お姉ちゃん…………お姉ちゃんはなんであのお兄ちゃん怒ったの?」
子供の純粋な問いに、リエーリはしゃがんで、少女と同じ目線になる。
そして、優しく口調で話しかける。
「あのね、あのお兄ちゃんは人の命を取っちゃったの」
「でも、お兄ちゃんはあたしたちを助けてくれたよ」
その声に、リエーリは言葉を詰まらせる。
確かに、彼は人を殺した。
ただし、それはこの村の人々を守るにあたってそうなったということだ。
しかし、リエーリは仕方なしに殺したという所がどうしても許せなかった。
「ねぇ、なんで?」
悩むリエーリを気にせず、少女は自分の疑問をリエーリに押し付ける。
ハッキリとした答えが見つからず、困惑していると聖痕からの声が彼女の頭に流れてきた。
『…………少なくとも、彼は違うのでは無いか? 我はそう思うが』
「うん、わかってるよ。フォルレガート…………だけど」
少し下を向きながら、小さく頭の中に響く声に答える。
その様子に目の前の少女は疑問符を浮かべ、首をかしげる。
「こんなとこにいたの? ほら、火葬があるわよ」
不意な女性の声に、二人は声の主へと向く。
駆け寄ってきた女性は先程の様子から、この少女の母親のようだ。
それよりも、リエーリはその女性が発した言葉が気になった。
「あの、火葬って?」
「あの旅人さんがね、自分が殺した人を葬るらしくてね。今、火をつける所なの」
その言葉に、リエーリはグレイが“彼ら”と違う事をハッキリと感じた。
人の尊厳を何食わぬ顔で踏みにじった“彼ら”とは。
「あの、それは何処でやりますか?」
「ああ、村の広場だよ。もうすぐ点火するらしいよ」
行かなければならない、そう思ったリエーリはそう問い掛けるとその女性はそう教えてくれた。
リエーリは彼女に「ありがとうございます」と一礼し、急いで家のあるモノを取りに入った。
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