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「ごめんなさいっ!!」
あらかたの作業が終わり、再びリエーリのいた家の中。
純白の帽子を外して、リエーリは頭を大きく下げた。
しかし、グレイは一体何の事に対して謝られたかわからず、困惑する。
「私、てっきり力で人を捩じ伏せるような人かと思って…………」
そこでようやくグレイは、あのビンタと「最低」と言い放った事に対する謝罪だと理解した。
それに対してグレイは、両手のひらを前に広げてリエーリに頭を上げるよう促す。
「ううん、的を射ているよ。元はただの戦争の兵器の一つだったから」
「えっ…………?」
その言葉に、今度はリエーリが驚いた。
それと同時に兵器という言葉に彼女はピクリと反応を示した。
その反応から、彼女が軍人に対する感情が少しだけわかった。
「脱走兵なんだ僕は、“鉄血帝国ジェノウシス”の」
「鉄血帝国……、世界で一番国土を有している軍事大国だったよね?」
確認するように、リエーリが呟くとグレイが頷く。
「僕は軍と戦争に絶望して、軍を逃げ出したんだ」
「だから、聖痕を…………」
虚しそうな表情を浮かべてグレイはそう言った。
その言葉にリエーリは彼の目的を理解した。
少なくともこの戦争は、聖痕によってもたらされる絶大な力によって泥沼化されている。
聖痕を消す術が見つかれば、ギフターは殺し合いに縛られなくなり、独裁的な国家の力は失われ戦争はより早く終結する事に繋がるだろう。
彼女は少し考えた後、何かを決めたようにテーブルに置いていた帽子を再び被り、立ち上がる。
「ねぇ、私もグレイ君の旅について行っていいかな」
唐突なセリフにグレイは言葉を失う、正直彼女の頼みはグレイにとって願ったり叶ったりだ。
彼女に釣られて、自分少し動揺気味に椅子から立ち上がる。
「キ、キミがいいなら是非。でもなんで急に」
「うん、ありがとう。私の旅はあてが無いから。ほら、軍に確保されないようにするのには一人より二人の方がずっといいよ」
そう言って、リエーリは右手を差し出す。
それに答えるようにグレイはそれを右手で握る。
「よろしくね。グレイ君」
「うん、よろひく。リエーリ」
動揺故か、思わずグレイはセリフをかんでしまい、それを皮切りにリエーリは思いっきり笑い始めた。
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