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獣道を真直ぐ下って行く。
村人の話だと、この道を曲がる事なく進むと森を出れるらしい。
本人達がこの森を出たこと無いから、不確かだが信頼出来る道はこれぐらいしかなかった。
「ねぇ、グレイ君」
「グレイでいいよ。君付けは余り慣れてないんだ。それと僕も呼び捨てでいいかな?」
「うん、わかったよグレイ。森を抜けたら何処に向かうの?」
リエーリの言葉に、グレイは荷物を下ろすと一枚の筒状に丸めた紙を取り出した。
そして、それを彼女にもよく見えるように大きく広げる。
「あっ、これって…………」
見た目は至って普通の世界地図だが、右下の端に書かれた文字にリエーリは思わず言った。
その後に続く言葉がわかり、グレイは頷く。
「そう、世界地図“R・ミーシャ”の最新号。常に変わり続ける国境を寸法の狂いも無く書き上げる最高の地図さ」
そう言って、グレイは地図の中でも一際大きい大陸の南西を指す。
「砂風王国“アレビアント”。随分前に此所に消えた歴史の一部があるって聞いてね。聖痕の起源を知るのにいいかなと思ったんだ」
「わかった。じゃあ、此所から自治州“アスティオ”を通って行くのね?」
「そういう事、まずはこの森を抜ける事が先だけどね。さあ行こう」
「うん、了解」
今後の方針も決まり、グレイは地図を荷物に再びしまうと二人は歩き出した。
ただ、二人の行く先は暗雲が立ち込んでいて、何かよくない事が二人を待ち構えているような、そんな天気だった。
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