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360度地平線の見える平原を、二人は歩いていた。
森を抜けてから二日経ち、二人着実に自治州アスティオへの国境に近付いていた。
空は絶好の洗濯日和と言える程の快晴だが、鳥の鳴き声一つも無い静かな平原に気味悪ささえ感じる。
「そういえば、リエーリの聖痕の属性は? 戦いに巻き込まれる前に聞いておきたいんだけど」
国境の付近を来たからか、少し緊張した面持ちでグレイはリエーリに聞く。
出来れば戦うような事は仕方ないが、ギフターなのに旅人をしている時点で軍と戦う事は避けれないだろう。
無論、それは対立するという訳では無く軍に確保されるのを防ぐ為にだ。
それをわかって、リエーリは快く頷く。
「私の聖痕の属性は“音”、名前は“フォルレガート”ね。覚醒(ブラスト)は二まで使えるよ。あとは、使える聖術二つだけ」
そこまで説明すると、リエーリは腰から銃を抜く。
「聖術の一つは“アレグレット・クロック”、身体のほんの一部分の速度を音の速さまで、引き上げるの。私は自分の利き手にかけてるよ。もう一つは“ヴェクサシオン”、これは簡単に言えばイヤな音ね。これは味方識別があるから。グレイのは?」
「僕の属性は“重力”、名前は“ガデュウ”。リエーリと同じで、覚醒(ブラスト)は二まで。聖術は全部で三つ…………っ!! おしゃべりは終わりみたいだね」
説明の途中で、グレイは急に足を止めて言った。
そこには目の前に一面、赤茶色の大地が続いていた。
更には、鼻を突くような肉が腐った不快な匂いも微かに感じた。
『久々だな、相変わらずイイ鉄の匂いと死臭だ』
匂いなんて感じないクセにと、グレイは心の中でガデュウにツッコミ、改めて前方を見渡す。
爆発音が聞こえてこない事から近くでは戦闘は起きてはいないだろう。
「国境だ、気を引き締めて行こう」
そう呼び掛けると、リエーリは無言で頷く。
グレイはギュッと右手を握り締め、赤い大地を踏み締めた。
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