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「…………国境は、いつ来てもいい気分はしないね」
「同感、血を吸って赤くなった地面だ。改めて、戦争がイヤになる」
武器を手に携えながら、二人は遠方に気を配りながら先へと進む。
すると、風の音と共に耳が捕らえた微かな声にグレイは悪寒を感じる。
リエーリも、どうやら勘づいたようだ。
二人は、同時に同じ方角を向く。
「マズい…………」
「うん、逃げるよ」
揺れる地面と肌を刺すような狂気。
自らを鼓舞し、猛り狂う声を先程よりもハッキリと耳にする。
二人の予感を確信に変えた。
『おおぅ……グレイ、タイタロアとレイガディオンの軍だぜ。こりゃ、ぶつかるな』
「わかってるっ!!」
ガデュウが悠長に状況を述べると、グレイは怒鳴り気味に返す。
とにかく、ど真ん中に巻き込まれるのだけは避けたい。
即座に全力で最前線から逃れようと二人は走り出した。
すると、空気を震わせて数回の砲撃音が鳴り響く。
『リエーリっ!!タイタロアの砲撃がきた。狙われてる』
「あーー、もう。なんでこんなに運がないの? “第一覚醒”」
フォルレガートの呼び掛けに、リエーリは嘆きながら銃を引き抜く。
そして、銃がリエーリの声に呼応し、ベルの紋章が刻まれた金色の銃へとフォルムを変える。
「当たって、“アレグレット・クロック”」
コンマ一秒以下で、トリガーを連続で絞る。
発砲音と共に放たれたのは、弾丸ではなく振動の塊。
音の弾丸は見事に砲弾を捕らえて、空中で爆発した。
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