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先程自らのトラップを踏み、コショウ爆弾の餌食になった少年はムスッとした表情で座り込んでいる。
まだコショウが効いているのか、彼の目は真っ赤に潤んでいた。
「…………だんまりか、どうしよう」
何度問いかけても返してくれないので、グレイはほとほと疲れてきた。
「んーー、まだ国境の近くだから出来れば早く離れたいんだけどね」
そう言って、リエーリは逃げてきた方向の空を眺めた。
随分遠くに逃げてきたつもりだが、まだ微かに砲撃音が耳を捕らえる。
「ところでグレイ。工作員って戦場にも出るの?」
「うん。戦場に罠を設置したり、忍び込んで敵物資の破壊とか直接戦わずバックアップを中心にね」
説明を終えて、改めてグレイは困った表情で少年を見つめる。
勿論相変わらず彼の態度は変わらず、話しそうな気配などまるで無い。
すると、リエーリがその少年の前に座って顔を見つめる。
「ねぇ、名前教えてくれる?」
「うん、モチロン。オイラはノトム、ノトム=クリッジ」
今までのグレイへの対応とは打って変わって、少年の態度がコロリと変わる。
口調からわかるように勿論、少年の表情もグレイを相手していた時とはまるで別物だ。
「キミはレイガディオンの工作員かな?」
再確認の意を込めて、再びグレイはノトムと名乗った少年に問う。
しかし予想通りというか、彼はグレイに対してツーンとそっぽを向く。
その様子にグレイはがっくりと頭を垂れる。
「リエーリ、僕は見回りでもするよ。彼はキミと話したいみたいだから」
彼がどういう性格なのか確信を持ったグレイはここは彼女に任せるのが適当だと思い、立ち上がった。
「うん、わかったお願いね。じゃあ、ノトム君だっけ? 話してくれる?」
「うん。何が聞きたいお姉様?」
リエーリの言葉にノトムは、今までの中で一番と思わせる程明るい顔で返事をした。
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