第一章[赤い国境]

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ノトムの事は、リエーリに任せてグレイは周囲の警戒に行こうとする。 だが、二、三歩程歩みだしたところで彼の足は止まった。 「リエーリっ!!」 剣を抜くと同時に、呼び掛ける。 その声に反応したリエーリも直ぐにホルスターから銃を引き抜き、セーフティーを外す。 グレイとリエーリ、そしてノトムの視線の先には軍服を纏った男が二人、小高い丘に立っていた。 その二人を見たノトムは、真っ先にリエーリの後ろに隠れた。 「そこの二人、そこの子供をこちらへ渡せ。お前達に拒否権は無い」 二人の軍服を着た男の内の一人が三人を見下ろしながらそう言う。 両者ともノトムと同じ服装と胸の紋章から、レイガディオンの兵士だとわかる。 「彼に何の用があるんだい? 随分荒々しいけど」 「当然だ。そいつはギフターにも関わらず三度目の敵前逃亡を行なったのだ。歯向かうならお前達も拘束させて貰う」 その言葉にグレイは彼らがピリピリしている理由が納得した。 一騎当千にもなるギフターが直前逃げられては、全体の士気が著しく下がってしまう。 しかも、自国を守る防衛戦だ。 そうやすやすと落していい戦いでは無い。 「でも、こんな子供を戦場に巻き込むなんて気が引けないかい?」 「ハッ、化け物の事情など知ったことか」 あざ笑うように、その兵士は言い切った。 その声に、グレイの眉がピクリと動く。 すると、もう片方の兵士がリエーリの左手だけに着用したグローブに着目する。 「おい、この女もギフターじゃないか?」 「何? …………貴様らの身柄を拘束する。武器を捨て……っ!?」 そこで兵士の言葉が急に途切れる。 それもその筈だ。 既に一人の首には鋭い刃が、もう一人の頭には銃口があてがわれていた。 「さっきの言葉を撤回しろ」 「死にたくなかったら帰って」 余りに一瞬の出来事に茫然とする兵士とノトムを尻目に、二人は同時にそう言い放った。
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