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ノトムの事は、リエーリに任せてグレイは周囲の警戒に行こうとする。
だが、二、三歩程歩みだしたところで彼の足は止まった。
「リエーリっ!!」
剣を抜くと同時に、呼び掛ける。
その声に反応したリエーリも直ぐにホルスターから銃を引き抜き、セーフティーを外す。
グレイとリエーリ、そしてノトムの視線の先には軍服を纏った男が二人、小高い丘に立っていた。
その二人を見たノトムは、真っ先にリエーリの後ろに隠れた。
「そこの二人、そこの子供をこちらへ渡せ。お前達に拒否権は無い」
二人の軍服を着た男の内の一人が三人を見下ろしながらそう言う。
両者ともノトムと同じ服装と胸の紋章から、レイガディオンの兵士だとわかる。
「彼に何の用があるんだい? 随分荒々しいけど」
「当然だ。そいつはギフターにも関わらず三度目の敵前逃亡を行なったのだ。歯向かうならお前達も拘束させて貰う」
その言葉にグレイは彼らがピリピリしている理由が納得した。
一騎当千にもなるギフターが直前逃げられては、全体の士気が著しく下がってしまう。
しかも、自国を守る防衛戦だ。
そうやすやすと落していい戦いでは無い。
「でも、こんな子供を戦場に巻き込むなんて気が引けないかい?」
「ハッ、化け物の事情など知ったことか」
あざ笑うように、その兵士は言い切った。
その声に、グレイの眉がピクリと動く。
すると、もう片方の兵士がリエーリの左手だけに着用したグローブに着目する。
「おい、この女もギフターじゃないか?」
「何? …………貴様らの身柄を拘束する。武器を捨て……っ!?」
そこで兵士の言葉が急に途切れる。
それもその筈だ。
既に一人の首には鋭い刃が、もう一人の頭には銃口があてがわれていた。
「さっきの言葉を撤回しろ」
「死にたくなかったら帰って」
余りに一瞬の出来事に茫然とする兵士とノトムを尻目に、二人は同時にそう言い放った。
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