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「くっ…………」
悪態しかつけなくなると、二人の兵士は鞘ごと腰の剣を草原に投げ捨てる。
そして両手を上げて、戦意の無い事を示す。
だが、二人の顔には敵意がハッキリと浮かんでいた。
「ノトム、もう親の力など関係ない。間違いなくお前のようなふぬけは訓練所行きだ」
一人の兵士が自らの軍へと戻る最中、振り向きそう言い放った。
それだけ言い切ると二人は振り向かずに走って草原に消えていった。
「訓練所?」
「レイガディオンには徴兵制度があるんだ。確か年齢は…………」
「20からだよ。九割のヤロウは訓練所に連れてかれる。オイラはギフターだから特例で軍に編入させられたんだ」
リエーリの問いに、グレイが答えている所をノトムが横から補足する。
余りに急だったのに、グレイは驚いた顔をしてノトムを見つめた。
「…………なんだよ」
「いや、意外だったから」
その言葉を聞くと、ノトム再びツーンとそっぽを向く。
そして、あの兵士達が去って行った方角を眺める。
「そろそろオイラは帰るや」
走り去って行った彼の言葉が少々気になりつつも、ノトムはそう二人に告げて背を向けた。
そして、歩き始めようとした時…………
「あっ、じゃあ案内してくれない? 私達行く宛が無くて困ってたの」
リエーリの言葉に物凄い勢いでノトムは振り返る。
そして、心なしか随分足取りが軽くなって見えた。
「しょうがないなぁ、お姉様の言う事なら。ホラホラ、こっちだよオイラに着いてきて」
先程の冷めた表情は何処へやら、デレデレに緩み切った顔でノトムは二人を先導して行った。
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