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「…………此所、何処?」
ガサリと草むらを掻き分け、旅人用の褐色のマントを羽織り、腰に大剣を携えた灰色の髪の青年が呟く。
髪と同じ色の両目が捉えれるのは緑ばかりでいい加減イヤになってくる。
『クカカカッ、だから言ったじゃねぇかグレイ。関所を皆殺しにすりゃあ楽だって』
草を掻き分けて更に奥へと進む最中、脳内に直接流れるドスのきいた声が流れてくる。
その台詞に先程の青年、もといグレイがため息を吐く。
「…………ハァ、ガデュウ。だから関所が落ちると国の軍が飛んでくる、そうなると厳戒体制が敷かれて町すら入れなくなる。只でさえギフターって理由で捕まるのに」
『いいじゃねぇか。向かう奴等は皆殺しだ』
意気揚々としたガデュウの声を聞いて、グレイは本日二度目のため息を吐いた。
すると、グレイは微かに小さな音を聞き取り、顔を上げてキョロキョロと辺りを見回す。
『あぁっ? どうした』
「音、音が聞こえるんだ…………こっちだ」
直ぐに足を急がせて、草を踏み進む。
草の音を気にもせずに、ただ聞こえる旋律へと歩みを進める。
そして、少し開けた広場のような所へと出る。
「…………エスト?」
そこには、グレイが呟いて名の彼女と見間違えるような容姿の少女が小さな子ども達の前でヴァイオリンを演奏していた。
腰まで伸びる長い栗色の髪に、つばの広い金色の羽根が二本刺さった純白の丸い帽子が特徴的だったが。
それよりエストと瓜二つの顔をもつ少女にグレイは思わず見とれてしまった。
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