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小さな道を少し歩き続けると、のどかな小さな村に出た。
子ども達の笑い声が度々聞こえ、遠くで遊んでいるのがグレイの視界に入った。
「凄いなぁ…………国境の近くにまだこんな村があるなんて」
感心した表情でグレイは呟く。
五ヶ国間が入り乱れの戦争が絶えないこの世界では国境が常に戦火の最前線となっている。
そんな所の近くには、村などある筈も無いとグレイは思っていた。
しかし、森に包まれたこの場所だから見つからなかったのだろう。
そう自己完結させて、グレイは歩みを進める。
飼料を運んでいる途中にちょうど彼を見掛けた中年の男性が、少し驚いた表情を浮かべた。
「おや、珍しいですな。こんな短い間に二人も旅人が来るなんて」
「あっ、そうなのですか?」
「はい、白い帽子を被った長い栗色の髪の女性の方が」
その言葉に先程の広場にいた、リエーリという名の少女が頭に浮かぶ。
「その人は今何処にいますか?」
「あぁ、向こうの空き家を貸したのでそこにいると思いますよ」
男性の指をさす方を見ると、小さな木造の家が目に入った。
その言葉にグレイは「ありがとうございます」と頭を下げて、教えてもらった家へと向かう。
「………………」
『やっぱ気になんのか?あの女』
「まあ、違うと言えばウソになるね」
そう言って、色褪せた少し古い木造の家のドアに立つ。
そして、ノックをふたつ。
乾いた木の鈍い音が響く。
「はい、今出ます」
ドア越しに女性の声が聞こえ、ガチャリとドアノブが回る。
そして、グレイのよく知った彼女によく似た少女が出てくる。
彼女はまじまじとグレイの顔を見つめると。
「あの……初めての方ですね?」
「はい、初めまして。グレイ=エルダーディスと言います。ここに旅人がいると聞いたので挨拶をと」
「あっ、じゃあ、立ち話もなんですから中にどうぞ。私はリエーリ、リエーリ=ガラッソです」
笑顔でそう名乗ると、彼女は家へ招き入れる。
見覚えがあるとはいえ初対面なので、少し緊張しながらグレイは家屋へと足を踏み入れた。
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