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家に入るとシンプル、その一言に尽きる部屋で小さなベッドと中央にテーブルのみが置かれていた。
その真ん中のテーブルで、二人は腰をかける。
「で、なんでこんな村に来たんですか?」
「まあ、関所を避けようとしたら迷ってしまって…………」
少し照れくさそうに頬を掻きながら、グレイは言う。
すると、急にリエーリが下を向く。
その背中はピクピクと震えていた。
もちろん、そんな急にテーブルに伏せられては、グレイは何をしていいかわからなくなる。
「プッ……ククッ、アハハ。アハハハハッ!!」
そして、大声を上げて一気に笑い始める。
一体何が面白いのかわからず、グレイはポカーンとしている。
「アハハハハ、迷ったって。アハハハハハハハ」
彼女の笑い声が十分程部屋で反響して、ようやくその音が消えた。
「ハァハァ…………ごめんなさい、初対面なのに失礼なのはわかってるけど我慢出来なくて。私も同じ理由此所にたどり着いたからつい」
そう謝りながら、リエーリは自分の笑った理由を言う。
彼女の笑いのツボがイマイチよくわからないがグレイは取りあえず気にしないでおいた。
「じゃあ、君もギフター?」
「うん、ギフターだよ」
そう言って、彼女は左手のグローブを外して、手の甲をグレイに向ける。
そこには、ハッキリとした何本もの黒の線が不規則に彼女の手の甲に刻まれていた。
その時、グレイが少し悲しそうな顔をしているのをリエーリは気付いた。
「キミは何の為に旅を?」
グレイが話題を変えて、リエーリに問う。
すると、リエーリはベッドの側に置いてあった黒塗りのケースを手に取る。
「私は音楽家なの。だから、音楽を沢山の人に伝えたくて旅をしてるの。グレイ君は?」
そう言って、ケースからヴァイオリンを取り出してグレイに見せる。
そして、再びヴァイオリンをケースにしまうとグレイに問い返す。
「僕は聖痕を消す為に旅をしているんだ」
真剣な表情で、グレイはそう答えた。
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