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そして彼らはその期待のゲームの第1期プレイヤーになれるのだ。興奮もしようというものだ。
通行人を見回す人がいれば彼らだけではなく誰も彼もが早足になっていることに気付いたかもしれない。
しかしそんなことを気に掛ける余裕のある者はこの場には居なかった。
諒成、湧喜、勇夜の3人もいつしか話さなくなり、一心に目的地・葛城シーランド内にある〈アイオーン〉のエリアへと足を進めた。
入り口まで来たところで、そこに一人の男が居るのが見えた。
その男は係員には到底見えない。
地味だが高級な黒のスーツが良く似合っている。年は恐らく30代後半から40代前半。50には届いていないだろう。
男は入り口の横で穏やかに微笑んでいる。
ほぼ全員が男のことなど気にも留めずに入り口を通り過ぎて行く。
中には何か思う所があるのか、男の顔を見て首を傾げる者も居たが何かを気付いた様子は無い。
「あの人………。」
しかし諒成は何かを気付いたらしく、そう呟いて立ち止まった。
「あのオッサンがどうかしたのか?」
湧喜も立ち止まり、聞いて来る。勇夜も同じ事を思ったのか、同じ様に立ち止まって顔を向けて来る。
諒成は少し何かを思い出すそぶりを見せた後、自信無さそうに言った。
「確か……葛城カンパニーの社長………だったと思う。」
その場の空気が凍りついた。
凍った空気を粉砕したのは湧喜だった。
「いや、それは無い。いくらなんでも。」
「ああ、無い。そんな偉い人がこんなとこに突っ立ってるはずがない。」
勇夜も同意見のようだ。
「いやでも、ちょっと前にテレビで見たんだって!絶対あの人そうだって!」
言い出しづらかっただけで本当は自信があったのか、それとも後に退けなくなったのか、今度ははっきりと言い切った。
それでも2人はまだ半信半疑だ。
だがここまで言い切られると本当かもしれないと思えてくる。
と、そこで勇夜がこの問題を解決してくれるとてもまっとうな案を提示してくれた。
「判らんなら本人に聞いてみればいいんじゃねぇ?」
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