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この一言により3人は件の男へと向かった。
『おはようございます。』
綺麗に3人で挨拶をハモらせる。
「ああ、おはよう。」
男はそれに対して気さくに挨拶を返す。
そして本題である質問をしたのは発案者である勇夜…………ではなく湧喜だった。理由は3人の中で一番口が上手いから。
「初対面の上いきなりで申し訳ないのですが、一つお聞きしてもよろしくですか?」
普段、敬語なんかほとんど使わない癖によくもまあこんなにスラスラ喋れるものだ。
男は穏やかな笑みを崩さず答える。
「構わないよ。なんだい?」
「あなたは……葛城カンパニーの社長…ですか?」
男はその言葉に始めて顔を笑みの形から変えた。
微笑から軽い驚愕へと。
「驚いたな。私の顔を見て覚えている人が居たのか。」
その言葉に勇夜が違和感を感じ、疑問をそのまま口に出した。
「あなたの顔を覚えている事がそんなに驚くような事なんですか?」
「ああ。結構、驚くべき事だよ。」
男は顔を微笑の形に戻し、3人を見回しながら楽しそうに話始める。
「私はテレビに映るのが嫌いでね。いや、嫌いというより恥ずかしいと言った方が適切かな。だからインタビューとかは軒並み断ってるんだ。だからテレビに出る事も無かった。最近あった、たった一回の例外を除いては、ね。それが君達が見たものだろう。」
「それを見て覚えてたならそれ程驚く事でもないんじゃありませんか?」
湧喜が問う。
男は答える。
「ああ。でもこの例外の映り方が問題でね。かなり遠い所から撮った上に私の顔が映ったのは本当に一瞬だったんだよ。それをちゃんと見てあの一瞬映っただけの人物の顔を本人と照合出来るくらいはっきり覚えているのは凄いと思うよ。誰が覚えていたんだい?」
男の問いに、
『コイツです。』
湧喜と勇夜が同時に言い、且つ同時に指差す事で答えた。
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