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「君か……なかなか良い記憶力だね。」
男はとても率直に誉めた。
「たまたまですよ。後は勘とかです。」
謙遜…という風でもなく諒成は答えた。
「ハハハ。君達は面白いね。そうだ。君達の名前は……おっと。人の名前を聞くならまずこちらが名乗るのが礼儀だね。」
そう言うと男は姿勢を正して名乗った。
「私の名前は葛城和成(カツラギカズナリ)だ。一応葛城カンパニーの社長をしている。覚えてくれると嬉しいな。」
「門生諒成です。ごく平凡な高校生です。」
「御劔湧喜です。右に同じです。」
「早馬勇夜です。以下同文です。」
それを聞いた和成は頷きながら、
「諒成君、湧喜君、勇夜君か。覚えておこう。あ、私のことは和成と呼んでくれ。」
頭に名前を刻み込む様に復唱し、要望を言った。
「じゃあ和成さんと呼ばせて頂きます。」
「うん。それでいいよ。ところで…………。」
和成がふと言葉を区切り左腕に付けた腕時計を見て言った。
「時間、大丈夫?説明会まであと1分も無いけど。」
3秒程の静寂のあと3人の顔からサーっという音が聞こえてきそうな勢いで血の気が失せていった。
そして次の瞬間には、「失礼します!」の声だけを残して、会場に向かってダッシュしていった。
「おー、速い速い。いやー。若いって、良いね。」
一人ポツンと残された和成が、のんびりとそんなことを呟いていた。
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