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走る。走る。走る。
全力で地を蹴り、腕を振り、ただ前へ、目指す場所へと駆けていく。
葛城シーランドは異常なまでに広い。
その広い敷地内の一番奥にゲーム施設〈アイオーン〉はある。
入り口からの距離はおよそ1㎞。その道のりを3人は全力で走っていた。
走り始めて3分少々。早くも一人目の脱落者が出かけている。
湧喜だ。
「ぜぇ、はぁ。お、俺はもうダメだ。俺を置いて先に行け!」
バトル漫画のようなノリで言う湧喜に、勇夜が言い返す。
やはりバトル漫画風で。
「何、馬鹿な事言ってんだ!そんな事は出来ない。頑張るんだ。もうすぐ援軍が来る!」
バトル漫画のノリではなく、戦争映画風のノリだったようだ。
湧喜がリタイヤしかけている。体力不足──主にスタミナ──がもたらした当然の結果だった。
諒成と勇夜はそこそこ体力があるが、湧喜には無かった故の事態である。
だが目的地はもう目と鼻の先。そもそもまだ5分と走っていない。
2人のノリに付き合う気もない諒成は冷ややかに言う。
「いいから、走れ。時間が無い。」
それについては同意見な2人もラストスパートをかけ、会場に駆け込んだ。
時間は8時4分。
少し遅刻だ。
しかし、説明会は始まっていなかった。
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