440人が本棚に入れています
本棚に追加
説明にかかった時間は20分弱。ゲーム開始予定の時間まであと30分といったところだ。
『それでは、説明も終わりましたので、本社社長並びにゲーム開発主任から一言ずつ挨拶致します。』
スピーカーから声が響き、残り時間の予定を告げた。
『社長もつい先程到着しましたので、まずは社長から一言頂きたいと思います。』
和成到着の知らせに湧喜が呆れ顔で言う。
「や~っと着いたか、和成さん。のんびり歩いて来てたんじゃね?」
もしこの言葉が当たっていれば、大企業の社長ともあろう者としてはあるまじき時間に対するルーズさだ。
そんな湧喜の呆れをよそに、和成が一同の前に姿を現した。
先程と同じ穏やかな笑みを浮かべながら、和成は話し出した。
「皆さん、おはようございます。葛城カンパニー社長、葛城和成です。」
マイクも使っていないのに会場全体に良く響く声で言う。
「まず、遅れて来たことをお詫び申し上げます。」
始めに謝罪の言葉を述べ、本題に入った。
「本日は我が社の開発したゲーム、〈アイオーン〉にご参加頂き誠にありがとうございます。仕事だ、などと肩肘張らずにどうぞ存分に楽しんで下さい。私からは以上です。」
そして、そう言って話を終えた。
『続きまして、開発主任、葛城智成(カツラギトモナリ)から一言。』
そう言われて進み出て来たのは、諒成達とそう年齢の変わらない少年だった。
(主任は大人がやって、開発者は開発に専念してるんだと思ってたが…………指揮も出来るんだな。)
諒成がそんなことを考えている内に、智成は参加者の真正面まで来て話し始めた。彼もマイクは持っていなかった。
「はじめまして。葛城カンパニー開発部主任、葛城智成です。知っている方も多いと思いますが、社長である葛城和成の息子でもあります。」
父親同様良く響く声で堂々と言う。
「この様な大規模なゲームの開発に携わることが出来た事を大変嬉しく思っています。また、皆さんには心より楽しんで頂けるようにと願っております。では、これで僕からの挨拶は終わりとさせて頂きます。」
そう言って智成は話を終えた。
最初のコメントを投稿しよう!